2013年2月28日木曜日

Linn Drum LM-2の修理記事!!

ビンテージ機器の修理過程をレポートします!

とあるきっかけで持ち込まれることになったLinn Drum LM-2です。

このLM-2について調べてみると、発表は1982年だそうです。

1982年、、、YAMAHAのDX-7が登場する直前ですね。

個人的にとても思い入れのある年です。








症状は、「急に電源が入らなくなった」そうです。

早速、あけてみます。




写真下の方に見えてる白いシールが貼ってあるものは、、、そう、EP-ROMです。

音源の種類はこれらの部品を差し替えて交換します。

今となっては考えられないですが、

これがいいんです!!












さて、原因はどこかな…と確認していくと、

げっ…

レギュレータの足が緑色に染まっています。

緑色…そう電池の液漏れが原因です。

主成分は、水酸化カリウム(強アルカリ性で劇物)です。

早速、浸食具合を調査します。

決して素手で触らないよう注意しながら作業します。
写真下にある白い筒3本が液漏れの大元の電池です。
3本分の電解液が漏れてるとすると…
「JAPAN」の文字が悲しく写っていますが、だからこそ
絶対に治してやるという気合いが入ります。










基板の裏はというと、


うげっ…





パターン全体に腐食が広がっています。



やはり電池3本分の電解液が全て出尽くしてしまったようです。






さらに詳細に観察していくと、


うげげっ…



裏から広がった電解液が基板の表まで進み

部品の中にまで浸食しているようです。


恐るべき毛細管現象!!


少しでも浸食の疑いのある部品は迷わず交換です。
(それぐらい水酸化カリウムは強敵なのです)

さっそく図面を入手し、部品リストを作成します。



部品を全て外し、パターン上にある緑色の結晶をこそぎ落としていきます。


想像を超える量の結晶が採取できました!!
結晶が取れたら次はパターンの劣化具合を調査します。
う~ん…さすがです。
この時代のものはしっかりと作られています。
パターンの厚み、素材、そして基板との強力な接着、どれをとっても凄いです。
少し熱を加えただけでパターンが取れてしまう今時の基板とは違います。

痛みがひどかったり、薄くなった部分のパターンを補修するだけで何とかいけそうです。




部品がのっていないうちに、特殊溶剤で強力にクリーニングをしておきます。

基板につながっていたソケットまでも浸食が進んでいます。

気を抜くことなく、クリーニング続行です。























ソケットからピンを外して、磨いていきます!!
ピンの劣化具合を調査して交換が必要かどうか判断します。



交換部品入手後、取り付けていきます。
結局、全部品交換することになりました。
そして、電池はやはり「Made In Japan」でリベンジ!!
そう、「エネループ」を使用することにしました。
エネループを選んだのには実はそれなりの理由があります。
もとの液漏れしていた電池は、ニッカド電池なんですが、今回使用したのはニッケル水素(エネループ)なのです。
ニッカド電池の代替えとしてニッケル水素電池を使う場合、注意しなければならない問題があります。
容量はニッケル水素にすることで格段に増えるのですが、ニッケル水素はニッカドに比べて放電量が多いというデメリットがあります。
頻繁にこの機材を使い続ける場合、電源が入る度に充電されるので問題ありませんが、しばらく使わない期間があると、最悪放電してしまいメモリーがリセットされてしまいます。更に放置し続けると…再度液漏れ、という事態も考えられます。
エネループはこのニッケル水素のデメリットである放電量を格段に少なくした製品です。だから買ってすぐに使えるんです!!







今回はソケットで取り替えできるようになっています。
電源を入れた状態でソケット(電池)にかかる電圧を測定して、
回路図で示された電圧になっているかチェックしてから電池を取り付けます。

そして、いよいよ、
電源を入れます!



うげげげっ…



無事に起動しました!!!!
(すいません。嬉しさのあまり電源ON時の写真撮り忘れました。)

そして、オーディオテストを行います。

スイッチとスライダーに接触不良がみられたので、クリーニングすることに…












スイッチが全て外された基板(写真左) と、外されたスイッチ(写真右)







スイッチたちはある程度分解して、特殊溶剤(酸化被膜を除去する目的で使用)に漬けた後、
何度かON/OFFを繰り返し、クリーニングします。















次はスライダー(フェーダー)です。












まずは、何十年間降り積もった埃を掃除します。

ここからが根気のいる作業…そう、全スライダーを分解クリーニングしていきます。

丁寧にバラして、脱脂クリーニング後、可動部分に適量のグリスを塗布していきます。

スライド部分用と接点部分用にそれぞれ適切なグリスを選定して塗布します。

これがスライダーの耐久性、動きに大きく影響します。








そして、最後に組み上げて、





完成!!
です。









ムーサ・エンタープライズでは、ビンテージ機器の修理も承っております。

一人でも多くの方の「往年の名機を末永く使いたい!」といったご要望にお答えできるよう、スタッフ一同、日々精進しております。
お困りの際は、お気軽にお問い合わせください!!



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