2013年7月29日月曜日
出張修理の現場より スピーカー編
今回は急遽ご依頼頂いた出張修理(見積)の様子をご紹介します。
なんでも、スピーカーからノイズが発生するとのこと。
現場へ伺い、スピーカーを確認すると、
なんと、E/V(エレクトロ・ボイス)のSX300ではありませんか。
この機種は音響業界でもベストセラーモデルと言ってもいいくらいの普及率です。
(個人的には前モデルのSX200(廃盤)の方が格段に音が良くて好きです。)
出荷数が多いモデル=修理も多いモデルです。
修理も数多くこなしておりますので、見ただけで不具合部分のだいたいの検討はつきます。
手順良く分解していき、ウーファーユニットから確認します。
やっぱり!?、 予想的中です!!
ダンパーのノリが剥がれています。ノイズの発生原因はここです。
実は、E/VのSX300は複数回の改良を経て現在のモデルとなっています。
その改良のひとつにダンパーのノリがあります。
ある一定期間のロットにおいて、ダンパー接着で使用されていた接着剤の性能がイマイチで、大振幅に耐えられなくなって剥がれてしまいます。(E/V側もおそらく把握していて、このロット以降、ダンパー接着に使用する接着剤を変えています。)
作業は、リコーンの修理見積もりをさせて頂いて終了です。
※リコーンについて、ご存じない方の為に簡単に説明させて頂きます。
(半分以上は私の愚痴です。)
リコーンとは、スピーカーのコーン紙を貼り替える作業のことです。
業務用スピーカーは、使用を重ねるとどうしてもコーン紙がヘタってきます。
(これは素材が紙の為、使用する度に消耗していきますので仕方がありません。アメリカでは大きなツアーが1つ終われば、全てのユニットをリコーンすると聞いたことがあります。)
そして意外にご存じない方が多いのですが、スピーカーユニットは、実はほぼ全て接着剤だけで組み立てられています。(N極とS極のマグネット同士の、とてもシビアな間隔でさえも実は接着剤で固定されているだけなのです。)
まさに のり細工、そう、職人芸なのです!
のり細工だから故にダンパーを固定している接着剤が剥がれるということは、恥ずべきことなのです。(振幅に対して、接着が剥がれるより先にコーン紙が負けて、破れることをキットが職務を全うした状態と呼びます。byとあるリコーン職人談)
どうしてもコストの事を考えざるを得ないメーカー製のユニットに、経験豊富な職人が貼った(リコーンした)ユニットが負ける訳がありません。
私1人だけでもSX300のユニットだけで、軽く100ユニット以上はリコーンした実績があります。故に、リコーンでメーカー純正のユニットに負けない自信があります。
ところが、日本国内ではここ数年リコーンキットの販売を止めるメーカーが増えてきています。
最近では、EVIや、TOAがそうです。
私はこのリコーンキットの販売停止には、断固反対です。
コスト削減、利益重視のメーカーのリコーンの質が信頼できないからです。信頼できないばかりか、リコーンよりもユニットの新規購入を勧められると聞くこともあります。
リサイクルなどという言葉が世間一般で取り上げられている今日、古くなった磁石を捨てて、新しいユニットの購入を勧めるよりも、紙だけを再利用するだけですむリコーンキットの販売を、選択肢の1つとして残すべきです。
また、最近の安価なユニットよりも、過去のユニットに使われている磁石の方が価値があります。
磁石は貴重な資源です。使い捨ては止めましょう!
最近のメーカーの方針や姿勢に、つい愚痴ってしまいました。
ムーサ・エンタープライズでは国内で購入できなくなったリコーンキットを海外(本国)より直輸入し修理受付することで、ささやかな抵抗をしています。
スピーカーでお困りの方は、是非一度、お気軽にご相談ください。
MUSA Enterprise / 加登 匡敏
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お世話になります。
返信削除当方所有のSX-200のリコーンをお願いしたらおいくらになるでしょうか。因みに2台です。
コメントありがとうございます。
返信削除大変申し訳ありませんが、お問い合わせは
info@musa-enterprise.com
までお願いいたします。
そう思う!リコーンこそエコ
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